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日本のマラソンはなぜダメになったのか 折山淑美

先日たまたま発見したので読んでみた。

この本は男子マラソン界のレジェンドと言われる宗茂、瀬古利彦、中山竹通、児玉泰介、犬伏孝行、藤田敦史、高岡寿成の7人が出版当時の男子マラソン界に対する苦言を呈し、どのように強化を進めれば世界と伍していけるのかを語ったものである。この本が出版されたのが2016年11月、まさにリオデジャネイロ五輪直後のことであり、佐々木悟選手の16位が男子フルマラソンにおける日本人トップだった時のことだ。この本の中でそれぞれのレジェンド達が好き勝手に意見しているわけだが、その中でも個人的に印象に残ったのが藤田敦史の言葉だ。

 

「練習に合わせて練習をやっていてはダメ。試合に合わせて練習をしていくことが大事。」

 

具体的な内容を要約すると、以下の通り2点となる。

  1. 最近の選手は引き算の練習をしている。つまり、次の日にキツイ練習(ポイント練習)があると前の日のトレーニング負荷を下げてしまう。前の日に長い距離を走等などして体を重くして次の日を迎えることができたら、そのポイント練習は負荷が高く、自身がより強くすることができるメニューになる。つまり、足し算の練習が必要。
  2. 足し算の練習は自身を強くするとともに、ピークを試合に合わせやすくすることにもつながる。ピークは長く持たないし、ピークが来てしまうと意図的に落とすことは難しい。したがって、練習にピークが来ないようにすることが重要。

至極真っ当な意見であるし、一国のトップを争う、しかも伝統的にマラソンが強い日本という国のアスリートができていないとは考えづらいことだと思った。漸進性の原則(トレーニング負荷を少しずつ高めていくことで少しずつ自身の能力も開発されていくこと)を重視することと、手段を目的化しないこと、と私は理解したが、この考え方は私自身のトレーニングにおいても今までよりも意識しなければと思った。

どうしてもポイント練習の前日はjogの時間を短くしたくなる衝動に駆られるが、ポイント練習をこなせるか否かに焦点を当てるのではなく、トレーニングを大局的かつ長期的に見ていかなければならないと思う。ポイント練習ごとに調子を合わせようとすると、調子の波の高さは低く、波の幅も狭くなる。そのようなトレーニングを積み重ねていくとレース当日、波の高さは高くなり切らず、また波の幅も狭いものだから調子のピークを合わせることが難しくなるのではないかと思う。一方でトレーニングメニューごとに調子の波を極力変動させず、レース前に調整をすると、調子の波がずっと低かった分、またトレーニング負荷が前者の考え方よりも高かった分、調子の波の高さは高くなるだろうし、調子の波の幅も前者の考え方より広く、レース当日に合わせやすいと思う。私の過去の経験からしてもこの考え方は正しいように思う。

市民ランナーとしては仕事やプライベートもあり、走ることにそこまでコミットすることが難しい状況にある人も多いかと思うが、この考え方を頭に入れておくだけでもトレーニングへの向き合い方が変わると思う。また、この考え方はマラソンだけではなく、何事にも適用できる考え方だと思う(仕事でも気付くと手段が目的化していることってありますよね)。そんな戒めも含め、タメになる一冊であった。