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「武士道」新渡戸稲造

 

 恥ずかしながら、新渡戸稲造と言えば少し前の5,000円札に描かれていた人物というイメージしかない。武士道というタイトルは聞いたことはあったが、正直、新渡戸稲造とリンクしているという実感を持ったこともない。細々と続けている英語の学習や海外駐在経験から、どうしても今まで当たり前に感じていた日本人としての前提というか価値観はどこからやってくるのだろうかと疑問に思うことが多い。
 そんな疑問は海外赴任当初からあったものの、忙しさにかまけて自分の中で整理しないでここまで来てしまった。最近、AmazonでE-bookをブラウジングしていたところ、ふと目に飛び込んできたのがこの本、「武士道」。前述した思いも感じていたので買って読んでみることにした。読んでみると、いやーこれまた面白かった。当初この本は英語で出版されていることから日本語に訳された文章は若干頭に入ってきづらい部分もあったが、日本人として育ってきて当たり前に感じていた価値観は、もとをたどるとこの「武士道」に行き着くのではないかと感じるほどだった。
 簡単に説明すると、「武士道」の精神では儒教の影響を大きく受けているが、特に仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌の8つの徳を大事にすることが重要とされている。8つの徳を本書の言葉を借りて簡単に説明すると、仁とは思いやり、義とは正義の心、礼とは礼儀・礼節、智とは叡智・工夫、心とは信用・信頼、忠とは偽りのない心、孝とは父母を大事にすること、悌とは年長者に従順なことを言う。
 この本を読んだ私の感想は月並みですが、人として当たり前のことをすることが重要だということだ。現代では合理主義が蔓延っていますよね。合理主義はつまるところ損得で物事を考えることで、その考え方が徐々に日本人から人情や義理といったことを忘れさせ、ドライで住みづらい世の中を作りつつあるように思う。もちろん合理主義が完全に悪いわけではなくて、特にビジネスで物事をジャッジする際には経済合理性を重視すべき局面は多いと思うが、今の時代だからこそ武士達が大事にしてきた精神である「武士道」を考え直し、モラルを見直すことが必要なのではないかということを思い起こさせてくれる本だと感じた。
 合理性と「武士道」で説かれている徳はバランスが重要なんでしょうね。私はバックオフィスの人間なので、ビジネスにおいてはどちらかというとブレーキ役を担うことが多い。なので、これらの徳の内容はとても納得感がある。特に義。不正なんかもってのほかだし。でも、合理的に判断しないと会社の利益が真っ赤になるのは火を見るより明らかだ。だからバランスが重要だよね。
 この本を読んで、儒教について私はこれまた見識が浅いことに気付いたので、儒教の本も読んでいる。これまた非常に興味深い。また時間を作ってブログで紹介したいと思います。最近読書が楽しい。